【ノクターン幻獣図鑑】No.002 音色鳥(ねいろどり)

ノクターン幻獣図鑑 No.2 音色鳥タイトル ノクターン幻獣図鑑
ノクターン幻獣図鑑
No.2 音色鳥 タイトルイラスト

別名、無窮彩の音食鳥(むきゅうさいのおんしょくどり)

ノクターン幻獣図鑑、今夜の舞台は、晩秋の森。
ひとりの青年がキャンプ中に観測した幻の鳥、音色鳥のお話です。
音に敏感で、日々の雑音に少しつかれやすいあなたへ。
森の奥深くに棲む、一羽の「音を食べる鳥」の物語をお届けします。


基本プロフィール

音色鳥の外観イラスト 無限の色彩の羽を持つ幻獣 ノクターン幻獣図鑑

◆ 名称:音色鳥(ねいろどり / Neirodori)
◆ 第002項目:ノクターン幻獣図鑑・森棲エリア
◆ 分類:森棲幻獣(しんせいげんじゅう)/無限彩属
◆ 別名:無窮彩の音食鳥(むきゅうさいのおんしょくどり)
◆ 生息地:森林の奥深く。清流や小川の近くを好む。
◆ 体長:約60センチ(成体)
◆ 外観の特徴:幼鳥の羽は煤(すす)のように暗く、ほとんど色を持たない。
成長と共に、外界から吸収した《音》がそのまま色となって羽に宿り、無限の色相を帯び、その個体ごとに唯一無二の無限に広がる《無現色》となる。
◆ 主食:美しい音・澄んだ音・自然音(風の音、せせらぎ、静かな楽器の音など)
◆ 嫌うもの:汚れた音(怒号や叫び声、雑然とした騒音)は決して捕食しない。
◆ 特記事項:自身の羽音や鳴き声すら瞬時に捕食してしまうため、観測が極めて困難な幻獣。
◆ キーワード:静けさ/音楽/共鳴/色彩
◆ 危険度:★★☆☆☆(人に危害は与えないが、音楽の才能のある者のそばに近づく習性がある。)
◆ 相性のよい人:音や人ごみに疲れやすい人/繊細な感性をもつ人


音色鳥の姿と生態

音色鳥が森の中を飛ぶ幻想的なシーン 音を食べる幻獣の姿

闇から生まれ、音で色づく羽

音色鳥の幼鳥は、まるで煤をかき集めたかのような黒みを帯びた羽をまとっています。
その身体には、まだほとんど色がありません。

彼らは森の中で、風が木々を揺らす音、川が石を撫でる音、
誰かが奏でた楽器の音など、「澄んだ音」だけを食べて成長します。

吸収された音はやがて、そのまま色となって羽根に宿ります。
朝焼けを思わせる橙、深い森の緑、遠雷の紫、星明かりの銀。
音色鳥の羽は、そうして少しずつ「聴いてきた世界の音」によって彩られていくのです。

やがて成体になる頃には、
七色、という言葉では到底おさまりきらない無限の色相を帯び、
その個体だけの《無現色》の羽をまとうと言われています。

森の静けさを護る「音の番人」

古来より、音色鳥は神聖視され、
森の静けさを守る幻獣として崇拝されてきました。

音楽や音にまつわる特別な才能を持つ人間のそばに、
ごく稀に姿を現すことがあるとも言われています。

音楽家たちの間で、
「自分の奏でる音は、音色鳥の羽に何色として宿るのか」
このテーマはしばしば、白熱した議論になるようです。

夜航奇譚録 音色鳥の章

夜航奇譚録の観測記録イメージ 双眼鏡や地図と羽ペンが並ぶ幻想的な探査道具の風景
夜航奇譚録 
それは、幻獣と出会った記録の断片

観測場所:ユリエル森林公園
観測時間:晩秋、薄明から暁の刻限

薄明の気配に肩を押されるように、テントの外へ出た。
夜気を吸い込んだ湿った土を踏みしめて、一歩進むたび、白い息が森の中へ溶けていく。

小川のほとりにしゃがみ、すくった水で頬を冷やした。
ぼんやりとした意識が、朝靄が晴れるようにゆっくりと輪郭を取り戻す。

一晩考え続けた。
それでも答えは出なかった。

父のいなくなった世界で、僕はどう生きればいいのだろう。

父からもらったポケットの中のハーモニカが、やけに重く感じた。

「父さん…」

晩秋の森はひどく静かで、続きのない呼びかけが虚しく響いた。
沈んだ気持ちを振り払うように、冷えた空気を胸の奥に吸い込んだ。

ふと顔を上げると木の梢にひっそりと一羽の黒い鳥が佇んでいた。

鳥は枝から枝へと移るたびに、葉を揺らした。
だが、その音だけが、どこにも存在しなかった。
気配が近づくたびに、あたりの音が消えていく。

しんと静まり返った時間の底で、鳥はじっと僕を見つめた。

木々の隙間から射し込んだ朝日に照らされたとき、
その羽は七色では到底足りない、無限の色彩に光輝いた。

心臓が一気に早鐘をうち、思わず息を呑む。

間違いない、音色鳥だ。

このチャンスを逃してはならない。

この瞬間に最もふさわしい音はなんだ。

その羽の輝きにみあう旋律はいったいどれだ?

僕はポケットからハーモニカを取り出し、
幼い頃に父がよく吹いてくれた旋律を、森へ差し出した。

奇妙な感覚だった。

馴染み深いやさしい旋律は胸の奥に確かに響いているのに、
その音は、奏でるそばから森に吸い込まれるように消えていった。

最後の一音を奏で終えたとき、静寂に包まれた音色鳥の羽がわずかに震え、燐光した。

勿忘草色に輝く羽に導かれ、僕は音楽家への道を歩き始めた。

記録者:蒼律の作曲家/レーマ・ミストール

音色鳥が寄り添ってくれる、心の静けさ

「音に疲れてしまう日」のための幻獣

音色鳥は、音に疲れてしまう心に、よく似ています。

幼鳥の頃の煤のような羽は、
まだ自分の「好きな音」「心地よい音」が分からない状態をあらわしているのかもしれません。

いろいろな音を聴きながら、
自分のペースで「これは好き」「これは今はいらない」と選んでいくうちに、
少しずつ、自分だけの色が宿っていく。

音色鳥が汚れた音を決して食べないように、
あなたの心も、本当は「受け取りたくない音」をちゃんと知っています。

今日のあなたへの、ちいさな提案

もし、今日が「音にちょっと疲れたな」という一日だったなら、
音色鳥のことを思い出しながら、こんなふうに過ごしてみませんか。

あなたの好きな音を一つ思い浮かべてください。

雨が窓をたたく音、炭酸のはじける音、本をめくる音。

音色鳥がその音を受けとった時、羽は何色に色づくでしょう。


あなただけの音色鳥を想像してください。

あなたが選んでいい。
好きな音だけを、心のままに。

そんなメッセージを、
無限の羽色に変えて、今夜も森の奥から送り続けています。

管理人
ノアリス

HSP気質の私、ノアが綴る「Noalice」の世界。
ルミリィやお嬢さま、かたるんといったオリジナルキャラクターたちと共に、空や星を見上げる物語をお届けします。
繊細な感受性にそっと寄り添う、小さな光になりますように。

— HSPのための癒しと物語の創作者 —
ノアリス(活動名)/ノア(著作権保持者)

ノアリスをフォローする
ノクターン幻獣図鑑
シェアする
ノアリスをフォローする
error: Content is protected !!
タイトルとURLをコピーしました