【ノクターン幻獣図鑑】No.001 ネムリュカ

まどろみの空イルカ・ネムリュカが雲の海を泳ぐイラスト。ノクターン幻獣図鑑 No.001 のアイキャッチ ノクターン幻獣図鑑
ノクターン幻獣図鑑 No.001 ネムリュカのタイトルイラスト

星の光を追いかけたあとの、少しだけ静かな時間に。
雨の気配がまどろみを連れてくる夜、雲の海では、空をゆったりと泳ぐ幻獣たちが、1日を終えたあなたをそっと見守っています。

その名は、ネムリュカ。
雨の日の空をゆっくりと降りてくる、まどろみの空イルカ。

「きょうはちょっと疲れたな」と感じる夜に出会えるかもしれない、そんな空棲幻獣《ネムリュカ》の物語をお届けします。


ネムリュカ|基本記録

雨の空を泳ぐ空イルカの幻獣ネムリュカの親子のイラスト
雨雲の上を、ゆっくりと泳ぐネムリュカたち。

◆ 名称:ネムリュカ(Nemuryuka)
◆ 分類:空棲幻獣(くうせいげんじゅう)/微睡み属
◆ 別名:まどろみの空イルカ
◆ 生息地:雨雲のすぐ上/晴れ間がのぞいた雲のすき間にある育成域「ネムリュリウム」他
◆ 体長:約4メートル(成体)/約1.2メートル(幼体)
◆ 質感:もこもことした水綿繊維のような身体。雨粒に触れると、一瞬だけ虹色に発光する。
◆ 性格:ふだんはおだやかな単独行動派だが、子育て期には仲間と寄りそい合う、やさしい性質。
◆ キーワード:雨/眠り/彩雲/子育て
◆ 危険度:★☆☆☆☆(人間に害を与えることはなく、静かに見守るだけの存在)
◆ 相性のよい人:雨の日に少し気分が沈みやすい人/眠る前にいろいろ考えすぎてしまう人


ネムリュカの姿と生態

雲でできた、やわらかな空イルカ

ネムリュカの身体は、雨雲からすくい取った綿をそのまま形にしたような、ふわふわともこもこが混ざり合った、不思議な質感をしています。

成体の身体は、しっとりとした雨雲色。
そのすぐ後ろには、ほんのり桃色を帯びた小さな子イルカたちが、列になって続きます。

雲をくぐるたび、からだの表面に雨粒が触れると、一瞬だけ虹色の光がふわりと広がり、またすぐに淡い色合いへと戻っていきます。

遠くから見上げると、雨の空をゆっくりと降りてくる「雲のイルカの親子」のように見えるでしょう。

ネムリュリウムと、雨の日の子育て

ネムリュカの生息域を示した図。晴れ空層、雲のすき間にあるネムリュリウム、低空層の位置関係を描いている。
ネムリュカの生息域

ネムリュカが棲む場所は、雨雲よりも少しだけ高い層。
晴れ間がのぞいた雲のすき間には、小さな保育所「ネムリュリウム」があると伝えられています。

ふだん成体のネムリュカは単独で行動し、それぞれが自分の好きな雲のかたちを見つけては、その上で微睡んでいると言われます。

けれど子育ての時期になると、各地から成体たちがネムリュリウムへと集まり、雲をふかふかの「ふとん」に仕立てて、子どもたちをやさしく包み込むのです。

彩雲とともに現れる誕生の儀式

ネムリュカにまつわる伝承の中でも、特に有名なのが「彩雲」との関わりです。

ごくまれに、空に淡い虹色の雲が浮かぶ瞬間、その彩雲がひときわ色づいた時間帯と、ネムリュカの姿が確認される時刻が重なることがあります。

それは、ネムリュカにとって出産の兆し。
彩雲そのものを「命のゆりかご」と見なし、光の降りそそぐ中で新しい命を迎える、儀式的なひとときなのだと伝えられています。

彩雲の光をたっぷり浴びて生まれた子イルカたちは、その身体に、ほのかな桃色の光彩を宿しています。

雲のくぼみにできる、星雫プール

雲のくぼみにできた星雫プールで、親ネムリュカと桃色の子ネムリュカたちが泳いでいる様子のイラスト
雲のゆりかごに満ちた、星の雫。

ネムリュカたちの世界では、大きな親ネムリュカが雲のあいだに身を横たえると、その背中と雲のあいだに、ぽっかりとやわらかなくぼみが生まれます。

雨上がりの空では、そのくぼみに集まった雨水が、溶けかけた虹と星の雫をすこしだけ混ぜ込まれて、「星雫(ほししずく)プール」になると言われています。

水面は深い海のようでいて、雲の白さをうつしてやさしい水色にきらめき、まわりを囲む雲はそのまま、子どもたちのためのふかふかの縁石(えんせき)です。

ピンク色の幼いネムリュカたちは、この星雫プールで泳ぎ方の練習をしたり、水しぶきで小さな虹を作って遊んだりしながら、大きくなっていきます。

夜航綺譚録 ネムリュカの章

幻獣観測記録のための双眼鏡や書物、地図などが並べられた観測机のイラスト
雨音の響く部屋で、静かな観測は続いている。

観測日時:ある雨の日
観測場所:第7飛行船部隊《ミスティルテイン》・第2観測部屋
記録者:ナオ・カイリ(スカイリレーター)

ある雨の日、第2観測部屋にて風紋解析をしていた時のこと。

観測窓に落ちる雨音が一定のリズムで心をほどいていく。
ゆるやかな眠気がまぶたの裏に溶けていく中、ヘッドセットに聞き慣れない音が混じった。

「ぷぅ……」と泡がゆっくり弾けるような丸く柔らかな音。
「きゅるきゅる……」と金属の糸が細く震えるような、かすかな音。

風の唸りでも、機器のノイズでもない。
訓練で覚えたどのパターンにも当てはまらない未知の響きに、ナオは思わず息を止めた。
彼女は魔道スレートを手繰り寄せ、収音モードに切り替えた。
「レコードリンク起動。距離、推定上層域。……魔素濃度の変化無し。」

自分の声を確かめるように呟きながら、立ち上がったばかりの波形に目を凝らした。
雨のざわめきの帯の端に、小さな丸い脈が浮かんでは消えていく。

その波形から目を離すと、なぜか胸の奥にも同じ脈がやさしく響き、ナオは観測窓の外を見上げた。

霧の幕の奥、
ピンク色の尾びれをゆらゆらと揺らしながら、優しい光をまとって、楽しげに泳ぐ数匹の雨イルカの子どもたち。

降りしきる雨雲が、静かな海のようにうねり、その上をすべるように進んでいく姿は、
見ているこちらの心まで、ゆっくりほどけていくようだった。

そして、その先頭には、しっとりとした雨雲色の、大きな体をもつ親イルカの姿。

彼らは雲の上から地上を見下ろしながら、子どもたちに空の道を教える「お散歩授業」をしていたのだ。

「信じられない。こんな優しい幻獣が空を泳いでいたなんて……」

その時、まっさきに浮かんだのは副官センリ・カグラの顔だった。

「センリさんに見せたい。ううん……一緒に見たいな。」

そう思った瞬間に、腰のホルダーに下げた通信魔石に反射的に指が触れる。
けれど術式を展開しかけた指は、途中でぴたりと止まった。

「今は、センリさん仮眠中だっけ。」

我に返りながら、胸の奥にくすぐったいような後ろめたさが広がった。
任務中に緊急事態でもないのに起こすには、あまりにも個人的でやさしい光景だった。

ナオはスレートの収音を止め、観測帳を開き、ネムリュカの姿を描き写した。
窓の向こうでは、ネムリュカの群れが進路を変え、雨雲の海の向こうへゆっくり消えていった。

「早く、センリさんに伝えたいな。『ナオ、よう見つけたな。やっぱり君は、俺の見込んだスカイリレーターやな。』なんて褒めてくれたりして……」

そんなことを思いながら、ナオは観測帳にネムリュカの尾ビレを描き足した。

いつか、空が今より少しだけ平和になったら。

魔物でも敵国飛行船でもなく、こんな幻獣たちを追いかけて図鑑を作って生きていけたなら。

そして、そのページをめくる隣に彼がいてくれたら。

雨音の余韻の中で、ナオはそっと観測帳を閉じた。

ネムリュカが寄り添ってくれる心の時間

雨の日の、少しだけ疲れた日に

雨の日、窓辺で外を見つめる女性の後ろ姿のイラスト。静かな部屋でひとり過ごす様子。

雨の音を聞いていると、なんとなく心までしっとりしてしまう日があります。

「今日もちゃんとできたかな」
「さっきのあの一言、よくなかったかもしれない」

そんなふうに一日を何度も巻き戻してしまう人のもとへ、
ネムリュカはそっと降りてきます。

雲の上から地上を見下ろしながら、子どもたちを連れて「お散歩授業」をするネムリュカ。
ふわりふわりと泳ぎながら、雨にぬれた町の光や、静かに灯る窓辺を、子イルカたちに見せてまわります。

「ほら、今日もちゃんとがんばった人たちがいるよ」

そんなふうに教えるように、柔らかな色の尾びれが、雨粒の向こうで小さく揺れています。

ネムリュカたちが通り過ぎた空の下は、その夜だけの、やさしい眠りの魔法がかかるのです。

今日のあなたへの、ちいさな提案

幻獣ネムリュカからの言葉を記した、手紙のような処方箋カードのイラスト

ネムリュカを思い出した夜は、こんなふうに過ごしてみませんか?

  • 「やれなかったこと」ではなく、「今日できたこと」をひとつだけ心の中で挙げてみる
  • それがどんなに小さなことでも、「よくやったね」と心の中で声をかけてあげる
  • そのあとで、深呼吸をゆっくり三回。

そして、あたたかいお布団にくるまって、ゆっくりと眠りの世界へ。
おやすみなさい。

管理人
ノアリス

HSP気質の私、ノアが綴る「Noalice」の世界。
ルミリィやお嬢さま、かたるんといったオリジナルキャラクターたちと共に、空や星を見上げる物語をお届けします。
繊細な感受性にそっと寄り添う、小さな光になりますように。

— HSPのための癒しと物語の創作者 —
ノアリス(活動名)/ノア(著作権保持者)

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