前回のあらすじ
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第1話では、エレメンタルスクールの帰り道、ルミリィがひとりでうすやみロードに入ったかたるんを追いかけ、傷ついた小さなトカゲの子と出会いました。
積雲のおうちと、小さな命のお手当て

心がほどけていくんだしぃ。
ルミリィのお家は積雲の中にありました。
白く柔らかな雲でできたお家で、かわいい小さな丸い窓がついています。
夕焼けの橙色の光をやわらかく受けて、お家全体がほんのりと染まって見えました。
「かたるん、着いたの〜。ここがルミリィのお家なの〜。」
「ここがルミリィのお家…。」
かたるんはお家の前で立ち止まって、丸い窓と、そこから溢れる温かな光をじっと見上げました。
ドアの向こうからもやわらかな光が漏れていて、かたるんは、なんだか鼻の奥がツンとしてきました。
何かが溢れてきそうで、小さく深呼吸をして、ぐいっと袖で鼻をこすりました。
「オレ友達のお家におよばれするの初めてなんだしぃ。」
「ルミリィも学校のおともだちお家によんだのかたるんが初めてなの〜」
かたるんは少し驚いて、ルミリィの顔を見つめました。
(ルミリィ、友達たくさんいるはずなのに、オレが初めてなんだしぃ…。)
かたるんは胸の奥がじんわり温かくなって、少し照れたように目をそらしました。
ふたりは玄関のアーチをくぐりました。
雲のカーペットは歩くたびにふわりと沈み、やさしく跳ね返ってきました。
雲の壁には空色のレインコートと長靴がかけられていて、お家の中にはわたあめみたいなやさしい甘い香りが漂っていました。
「なんかふわふわするんだしぃ…」
かたるんは足元を見ながら、雲のカーペットをゆっくりと一歩一歩踏みしめるように歩きました。
窓辺には雲でできた小さな鉢植えが並んでいて、淡い夕焼け色の光を浴びながら、葉っぱがやさしく揺れていました。
「トカゲの子に、早くお薬飲ませてあげなきゃなの〜」
ルミリィはそう言って、かたるんを薬箱のあるリビングに案内してくれました。
ルミリィが薬箱を開けて、小さな丸い瓶を取り出しました。
蓋に巻かれた布が金色のリボンで結ばれていて、瓶の中では水色のポーションがほんのりと輝いています。

「かたるん、これが天縫花のポーションなの。すぐお薬飲ませてあげるからトカゲの子を机の上にだしてあげてほしいの〜」
「わかった!すぐ出すんだしぃ。ほら、お薬の時間だしぃ。怖くないんだしぃ」
かたるんはバッグの中のトカゲの子にやさしく語りかけながら、机の上にトカゲの子を下ろしました。トカゲの子は雲でできた柔らかな机の上を気にいったようで、うれしそうに「キュウ」と鳴きました。
ルミリィは瓶からポーションを慎重な手つきで小さなスプーンに移しました。
するとポーションは空気に触れるたび、やわらかな白い光へ変わっていきました。
「空気にふれた天縫花のポーションがこんな風に光り始めたら、早く飲ませてあげるの〜」
「ルミリィ!すげぇんだしぃ!お薬がキラキラしてるんだしぃ!ほら、ゆっくり飲むんだしぃ」

トカゲの子は喉が乾いていたのか、スプーンに小さな舌をそっと伸ばして、ペロペロとポーションを飲み始めました。
キュウキュウと小さな声を鳴らしながら、少しずつ少しずつ飲んでいきます。
「ほんとによかったんだしぃ。ルミリィ、大切なお薬分けてくれてありがとうなんだしぃ。」
「ポーションが役にたってほんとによかったの〜」
ルミリィはポーションの瓶を両手で大切そうに抱えました。
「このポーションねルミリィの大好きな博士さんがもしもの時にってくれたの〜」
「……その博士さん、なんかすげぇ人なんだしぃ。」
しばらくするとトカゲの子のまばたきがだんだんゆっくりになってきました。
目をつむりながらもペロペロとポーションを飲み続けていましたが、やがて自分の尻尾のあたりにふわりと顔をうずめて、そのまま眠ってしまいました。
「あっ。お薬飲んだらすぐ丸くなって寝ちゃったんだしぃ。」

ルミリィはランプの明かりを少し落として、トカゲの子に聞こえないよう小さな声でかたるんに囁きました。
「ポーションを飲むとね、眠くなる作用があるの〜。眠っている間にお薬が体の中で傷を癒やしてくれるの〜」
「じゃあ、しばらく静かにしてあげたほうがいいんだしぃ」
ふたりはトカゲの子を起こさないように、静かにルミリィのお部屋に移動しました。
柔らかな雲でできた丸いベッド、雲でできた棚にはたくさんの空や宇宙の本が並んでいます。
壁にはルミリィが描いた空にすむ生き物の絵が飾られていて、天井からは雲のガーランドと星のモビールがゆらゆらと揺れています。
お部屋にはハーブのやさしい香りがほんのり漂っていました。
かたるんは部屋の中をゆっくりと見回しました。
「なんかすごくルミリィらしいお部屋なんだしぃ。落ち着くんだしぃ。」
「ちょっぴり恥ずかしいけどうれしいの〜。
かたるん、今おいしいお茶を入れるから座って待っててなの〜。」
ルミリィはポットから星待草と月香花のブレンドティーをカップに注ぎました。
やわらかな湯気とともに、花のやさしい香りがお部屋に広がります。
小さな雲テーブルの上にはクッキーの入った瓶もあります。
「かたるん、今日は心配して疲れたと思うの〜。ちょっと休憩するの〜?お茶とクッキーどうぞなの〜。」
「ルミリィ、ありがとなんだしぃ。なんかオレほっとしたらお腹減ってきたんだしぃ」

ふたりはお話しながらおやつを食べました。
かたるんはあたたかいお茶を一口飲むごとにまぶたがトロンと重くなってきました。
ルミリィはベッドからふわふわのブランケットを持ってきて、かたるんに差し出しました。
「かたるん、これ使うの〜。今日いっぱい頑張ったの〜」
「…ありがとだしぃ」
かたるんはブランケットを受け取って、小さく体を丸めました。
いつしかふたりはそのブランケットに潜り込んで、寄り添うようにぐっすりと眠ってしまいました。
どれくらい時間がたったでしょうか。
窓の外の空はすっかり群青色の夜空に変わっていました。
丸い窓から涼しい夜風がふわりと流れてきます。
するとそのとき隣の部屋から七色の光が輝きはじめました。
ルミリィもかたるんもまぶたから淡い七色の光を感じて目を覚ましました。
かたるんはブランケットから頭だけ出して、眠そうに目をぱちぱちさせながら部屋を見回しました。
「なんだしぃ。ここダンスホールなんだしぃ?」
「かたるん、ここルミリィのお部屋なの〜!この光、隣のトカゲの子がいるお部屋から入ってきてるの!!」
第3話へつづく
次回予告
次のお話では、眠っていたあの子が目を覚まします。
隣の部屋からあふれる七色の光の正体とは、いったい何だったのでしょうか。
ふしぎな夜のつづきを、どうぞお楽しみに。

スターゲイザーさんたち。最後まで読んでくれてありがとなの〜⭐️
トカゲの子に何が起きたのか、次のお話でいっしょに確かめるの〜!
ルミリィ、ここで待ってるの〜!
ルミリィやかたるんがナビゲートするやさしい宇宙と星のコラムも連載中です。


