エレメンタルスクール時代のお話

星空コラムの案内役、雲リス妖精のルミリィと、宇宙鳥のかたるん。
ふわふわと、ぶっきらぼう。
正反対のふたりは、どうして親友になったのでしょうか。
今夜は少しだけ時間を遡って、
ふたりの始まりの物語をお届けします。
くらい道と、はじめてのともだち
ルミリィはエレメンタルスクールの帰り道、ひとりでうすやみロードに入るかたるんの後ろ姿を見つけました。
「かたるんなの〜。あんな暗い道にひとりで入っていくの、心配なの〜」

かたるんは学校でもひとりでいることが多いのですが、その後ろ姿が少しだけさみしそうに見えたので、ルミリィは思わずかたるんのぴょこぴょこしたおしりを追いかけました。
エレメンタルスクールの帰り道は、ふわふわでやわらかな光があふれる雲ロードを通るのが約束です。
うすやみロードは光の届かない場所なので、とても暗くて寒い場所です。
ルミリィがうすやみロードの入り口に差しかかると、ふわふわしたしっぽが、いつもより少しだけ重たくなって、歩くたびにくるりと揺れる動きがゆっくりになります。
「あれ?なんだかいつもより体が重いの〜」
ルミリィは小さく首をかしげました。
手に持った星のスティックも、いつもならやさしくきらめいているのに、今は淡い光が点滅しています。
ルミリィは怖さを振り払うように、霧のかかった暗い道を歩きました。

しばらくすると、数歩前にかたるんのシルエットが現れました。
そのとき——
かたるんは小さな体を乗り出して、雲の裂け目に手を伸ばしています。
ルミリィは思わずかたるんにしがみつき、自分のもとへ引き寄せました。
「かたるん!!危ないの〜!落ちるところだったの〜!」
「びっくりしたしぃ!ん?同じクラスのルミリィ?こんなとこで何やってんの?」
「こっちが聞きたいの〜!かたるんがひとりでうすやみロードに入ったから、心配で追いかけてきたの〜!」
「えぇ?ルミリィってけっこう勇気あるんだしぃ。いつも本読んでるイメージだったしぃ。でもさ…追いかけてきてくれてさ…ありがとだしぃ…」
かたるんはほっぺを真っ赤にしながら、いつもより小さな声でルミリィにお礼を言いました。
ルミリィはにっこり笑って、かたるんの手をとりました。
「ここ寒いし暗いの〜。一緒に雲ロードに帰るの〜!」
するとかたるんは少し困った顔で、目をぱちぱちさせています。
ルミリィが不思議に思っていると、突然かたるんの肩に提げていたバッグが青白く光り始めました。
「かたるん?バッグ…光ってるの〜!!何入ってるの〜!!」
「う〜。もう白状するしぃ。ルミリィ、あのさ、誰にも内緒にしてくれだしぃ。」
「わかったの。誰にも言わないお約束するの〜」
「ほら、こいつが光の正体なんだしぃ」
かたるんはバッグをそっと開いて、ルミリィに光の正体を明かしました。
バッグの中には、ふわふわのタオルが敷かれていました。

その上に、てのひらにすっぽり収まってしまいそうなほど小さなトカゲがいました。
青い体がほんのりと光っていて、小さな羽がかすかに震えています。
「とってもかわいいの〜!!かたるんのお友達?」
「べつにお友だちとかじゃねぇけど…」
そう言いながらかたるんは、優しい目でトカゲの子を見つめました。
タオルの隅には、少しかじった跡のついた星粒の金平糖が置いてありました。
ルミリィはその金平糖に気づいて、そっとかたるんの顔を見上げました。
(かたるん、ごはんあげてるの。やっぱりとっても優しいの…)
かたるんは少し目をそらして、ぶっきらぼうに言いました。
「こいつさ、昨日この道の入り口でぷるぷる震えていたんだしぃ。
それで気になってさ、よく見たらほら、ここ。羽に小さな傷があるの、見つけたんだしぃ。」
「それでかたるんがお世話してあげてるの〜?かたるんってとってもやさしいの〜」
「べっべつに優しくなんてないんだしぃ。観察してるだけだしぃ。」
「ルミリィわかったの〜。さっき雲の隙間に手を伸ばしてたのって、この子の傷の手当てのために天縫花を取ろうとしてたの〜!」
「うん…そうだしぃ。でもオレ、結局取れなかった」
かたるんはとても悔しそうに眉をひそめて、トカゲの頭をやさしくなでました。
天縫花は雲の隙間に生える、空の小さな生き物たちにとって大切な薬草です。
お花は傷や病を癒やし、葉や根っこは体力回復薬になる万能薬です。

「ねぇかたるん。ルミリィのお家に天縫花のお薬あるの〜!今からこの子のお手当するの〜!」
「えぇ!!ルミリィ、ほんとにありがとだしぃ。オレ…オレ…」
「かたるん。あのね、これから困ったこととうれしいこと、何でもお話してほしいの〜。ふたりで考えたら困ったことは半分こ。うれしいことは倍になるの〜!」
「ぴっ。うん。オレさ、ずっと友達ってのが欲しかったんだしぃ。でもオレ、口悪いし、うまく話せなかったんだしぃ」
「ふふっ。かたるん、全然口悪くなんてないの〜!話してて、とってもやさしいのもうわかってるの〜」
ルミリィは、優しくかたるんの手をとりました。
「かたるんと小さなお友だちを、今からルミリィのおうちに案内するの〜!」
ルミリィは嬉しそうに星のステッキを空に向けてひと振りしました。
するとステッキからやさしい光がキラキラと溢れ、あたりを一瞬照らしました。
かたるんは少しびっくりして、目をぱちぱちさせます。
「な、なんだしぃ…」
戸惑ったようにそう言いながらも、ルミリィの手をぎゅっと握り返しました。
かたるんは胸の奥がぽうっと温かくなりました。
羽をふくらませて、ぷるぷるとお尻を小さく揺らします。
うれしいときの、かたるんなりの合図です。
けれどそれをごまかすように、少しだけ顔をそらして、そのまま雲ロードを目指して、ルミリィの手をぎゅっと握りながらズンズンと歩き始めました。
うすやみロードを抜けた瞬間、雲ロードが広がり、ふわりとやわらかな光がふたりをやさしく包みこみました。

第2話へつづく
次回予告
次のお話では、ルミリィのおうちで、小さな命のお手当てが始まります。
天縫花の力は、この子を助けることができるのでしょうか。
やさしい夜のつづきを、どうぞお楽しみに。
星や空のやさしい物語は、星空コラムでも読むことができます。


スターゲイザー団員ちゃん達ぃ!!
オレとルミリィの冒険は始まったばかりなんだしぃ。
またここで待ってるしぃ!!


