前回のあらすじ
第2話では、ルミリィの雲のおうちで、トカゲの子のお手当をしました。
そして眠ってしまったルミリィとかたるんが目を覚ました時、七色の光が二人を包みました。
前のお話はこちらから↓
七色に光り輝く、小さなあの子

「かたるん、ここルミリィのお部屋なの〜!この光、隣のトカゲの子がいるお部屋から入ってきてるの!!」
次の瞬間、かたるんはブランケットを飛び出して、隣の部屋に向かって走り出していました。
ルミリィもステッキをぎゅっと握って、あわててかたるんの後に続きます。
ふたりが隣の部屋に入ると、雲の机の上でトカゲの子がしっかりと体を起こして、ふたりをじっと見つめていました。
その小さな体の表面を、七色の光が波のようにゆっくりと流れていました。
光を放っていたのは、小さなトカゲの子だったのです。

七色の光が流れていました。
かたるんは迷わずトカゲの子にかけ寄って、やさしく手のひらに乗せました。
「すげぇんだしぃ。おまえこんなに光って、
ブルーサラマンダーの赤ちゃんじゃなかったんだしぃ?
あいつら雲の隙間の涼しいところによくいるけど、こんな七色には光らないんだしぃ」
トカゲの子はかたるんの手の中で小さな羽をパタパタと動かしながらキュウキュウと鳴きました。
「ルミリィ!お薬効いたみたいだしぃ!傷がふさがってるんだしぃ!」
ルミリィは、七色に光るトカゲの子をためらいなく手の上に乗せて、嬉しそうに笑うかたるんのそばにかけ寄り、その体をていねいに観察しました。
羽についていた細かい傷はすっかりきれいに塞がっていました。
青かった体には、まるで空にゆれるオーロラのように、美しい虹色の光がたえまなく流れていました。
「ほんとなの〜!傷もふさがってるし、とっても元気になったの〜。それにこんなにきれいな光をこの子が出してるなんてびっくりしたの〜!」
「なあ、ルミリィ。こいつ何の赤ちゃんか知ってるんだしぃ?」
「うーん。ルミリィもさっきまでブルーサラマンダーの赤ちゃんだと思ってたの〜。
空のお友だち図鑑でも見たことなくて、ルミリィもわからないの〜。」
「そうなんだしぃ…ルミリィでも知らない生き物なんだしぃ…。」
やさしくトカゲの子を撫でながら、かたるんは少し困った顔でつぶやきました。
「なあ?おまえのほんとの名前なんていうんだしぃ?」
トカゲの子はお返事するかわりに、よいしょよいしょとかたるんの手から肩によじ登って、ちょこんと座りました。

かたるんは少し眩しそうに目をシパシパしながらトカゲの子を見つめました。
「おまえ、こんなに動けるようになってよかったんだしぃ!」
「ふふっ!この子かたるんが大好きみたいなの〜!」
「うれしいけどさっ、こいつの家族や友達、きっと心配してるんだしぃ。オレさ、早くこいつをお家に返してやりたいんだしぃ。」
「かたるん…。ルミリィもこの子がお家に帰れるように手伝うの〜!」
「ルミリィ、ほんとにありがとうなんだしぃ。お薬分けてくれたこともだし、一緒に考えてくれてさ、すげぇうれしいんだしぃ」
かたるんは照れくさそうに羽をゆらしながら、ルミリィの目をまっすぐ見つめました。
「ともだちだもん!あたりまえなの〜。この子のお家、一緒に見つけるの〜」
「ありがとなんだしぃ!まずはこいつの名前探すところからなんだしぃ。
図書館にでも行ってみるんだしぃ?」
そのときルミリィは、天縫花のポーションの瓶にふと目が留まりました。
すると物知りな雲フクロウのオウリー博士の顔が思い浮かびました。
ルミリィたちは親しみをこめて、博士のことを「オウリー先生」と呼んでいます。
「かたるん!雲フクロウのオウリー先生なら、この子のこと知ってるかもしれないの〜!」
かたるんは顔を上げて、目をぱっと輝かせました。
「ルミリィ、それって天縫花のポーションをくれた博士のことなんだしぃ?」
「そうなの〜!オウリー先生はこの町で一番の物知り博士なの〜。」
「オレ、お薬のお礼も言いたいしバッグとってくるんだしぃ!」
ルミリィは、かたるんの準備を待つ間に、天縫花のポーションを薬箱に戻しました。
そして薬箱を、雲でできたふわふわの棚に慎重にしまって扉を閉めました。
ルミリィは星のステッキをきゅっと握りしめて、小さな声でつぶやきました。
「かたるんと一緒にあの子のお家をきっと見つけるの〜」
「ルミリィとオレなら、きっとできるんだしぃ!」
後ろから元気な声が聞こえ、ルミリィが振り向くと、かたるんがバッグを手に戻ってきていました。
かたるんは肩の上で七色に輝くトカゲの子を、バッグの中のタオルの上に大切そうに乗せました。
トカゲの子はキュウと小さく鳴いて、タオルにちょこんと座りました。
「出発だしぃ。ルミリィ!」
かたるんは七色の光がふわりと漏れるバッグをさげて、柔らかな手を差し出しました。
「うん、かたるん。出発進行なの〜!」
ルミリィはかたるんの温かい手をとって、雲のお家をあとにしました。

群青色に染まる空の下、ふたりと1匹はオウリー先生の研究所がある雲の塔を目指して、雲ロードをてくてくと歩き始めました。
「ねぇかたるん。夜にお外歩くのってちょっとドキドキするの〜」
ルミリィは、かたるんの手を少しだけ強く握りました。
「オレもそれ思ってたんだしぃ。でもバッグが光ってるからぜーんぜん怖くないんだしぃ!」
その言葉にこたえるように、バッグの中の七色の光が、ふわりと明るくなりました。
「ふふっ。ほんとに七色のランプみたいにきれいなの〜」
おしゃべりしながら雲ロードを歩いているうちに、星型の街灯がすこしずつまばらになってきました。
空の色も群青色からだんだんと深い藍色に変わってきました。
人気もほとんどなくなり、夜風も冷たくなってきました。
「なんか、さっきよりも暗くなってきたんだしぃ」
「うん…。ルミリィもすこしだけ怖くなってきたの〜」
ふたりはお互いの手をきゅっと握って、立ち止まってしまいました。
そのとき、バッグの中からトカゲの子が顔出すと虹色の光がふんわりと暗闇を照らしました。
その光に誘われるように、どこからともなく小さな光が、ひとつ、ふたつと集まってきました。
透明な体にピンクや黄色の淡い光を宿した、小さな夜蛍です。

夜蛍たちはふたりのまわりをつかず離れず、まるで道を照らすように、ふわふわと漂いながらついてきます。
「なんか…オレ、元気でてきたんだしぃ」
「ルミリィもなの〜。夜蛍さんたちありがとうなの〜」
ルミリィは夜蛍たちに小さくお礼を言って、またかたるんと歩き始めました。
やがて雲ロードの先に、高くそびえる雲の塔がぼんやりと見えてきました。
次回予告
オウリー先生を訪ねて、町外れの塔雲(とううん)の研究所にたどり着いたルミリィとかたるんたち。
物知り博士のオウリー先生は、はたしてトカゲの子の本当の名前を知っているのでしょうか?
ふしぎな夜の続きを、どうぞお楽しみに。
ルミリィやかたるんがナビゲートするやさしい宇宙と星のコラムも連載中です。



